避難の在り方や避難所等の災害対策に関する再質問主意書

参議院ホームページによると


 この度の台風十五号、十九号、そして二十一号と低気圧による豪雨は、全国に大きな被害をもたらした。また、避難の在り方や避難所等についても多くの課題が見つかった。

 以下質問する。

一 今回、ペットとともに避難しようとして、避難所に入ることができない人が多数出た。ペットの同行避難を可能とすることは、飼い主の命を守ることにもつながるため、予防接種などについての飼い主への啓発も含め、関係省庁が連携をし、ペットの同行避難の環境が整うよう、関係者への啓発や自治体への働きかけなどが必要だと考える。

 そのためにも、ペットの同行避難について、避難所運営マニュアルなどに明記することを自治体に改めて促すために、通知等を出すべきだと考えるが、政府の見解を伺う。

 また、今回の災害ではペットの同行避難に限らず、各自治体が作った避難所運営マニュアルが機能しなかった。今後は今回のような災害にも対応できるよう、各自治体に避難所運営マニュアルの見直しを行うよう促すべきと考えるが、政府の見解如何。

二 今回、多くの避難所が満員となり、新たに入れなかったという問題が発生した。避難所に入れず、あの風雨の中を帰宅させられた人や、新たに開設された遠い避難所を紹介されて、避難を断念した人もいたという。

 今後、避難所や避難の在り方をどう改善し、地域住民等へ避難情報をどう周知し、自治体の取り組みをどうサポートするのか、政府の見解を伺う。

三 本年十一月七日の参議院内閣委員会で、内閣府の策定した「避難勧告等に関するガイドライン」における「要配慮者等の避難の実効性の確保」の「(要配慮者)等」に、河川敷にいる人や、路上生活者、ホームレスが含まれるよう、同ガイドラインに明記すべきとの私の指摘に対し、平内閣府副大臣は、「地下にいる人と路上生活で何が違うんだというのは、確かにカテゴリー見て分かりにくいところもあると思いますので、今後、ちょっと議論をして整理をしたいと思います。」と答弁した。

 改めて伺うが、地下街等の利用者だけでなく、河川敷にいる人(ホームレスを含む。)についても同ガイドラインにおける「(要配慮者)等」に含まれるよう、同ガイドラインに明記する、または自治体職員が認識できるような措置を講ずるべきだと考えるが、政府の見解を示されたい。

四 日本では、多くの自治体において、学校など公共施設が避難所になっているが、私が文部科学省に確認したところ、学校でのトイレの男女比などは「全く把握をしていない」、「設計・建築基準の中に何の決まりもない」とのことであった。「全く把握をしていない」、「何の決まりもない」というのは事実か、まず明らかにされたい。

 また、今後、学校など公共施設の新築や増改築をする場合、避難所としての機能を担う可能性を想定し、例えば、要支援者対策やスフィア基準を考慮する、またはこれらを設計方針に盛り込むべきだと考えるが、政府の見解を伺う。

五 今回の災害でもボランティア不足が報道され、課題となっている。災害時にボランティア活動を支援する職能支援者を各自治体で採用するなど、ボランティア活動の拡充が必要である。

 個人でのボランティア活動には活動費の控除、NPO等のボランティア団体に対しては補助を行う等の税制優遇措置や補助金制度が必要と考えるが、政府の見解を伺う。

六 今回の災害では、千葉県を中心に多くの家屋の屋根に被害が出た。当初、自衛隊によるブルーシートの展帳が行われたが、被災者の中には自費で行った人もおり、不公平になると千葉県が判断し、千件以上のブルーシートが展帳されないままの被災家屋を残し、自衛隊は活動を終了した。

 このまま雨がふれば、更なる家屋損壊につながり、被災者は本来避けることのできた損失を重ねて被ってしまうことからも、自衛隊が率先して駆けつけられるよう、内閣府はしっかりとリエゾンの役割を果たすべきだと考える。

 十月三日に設置された「令和元年台風第十五号に係る検証チーム」では、具体的にどのようなことについて議論が行われるのか。また、同検証チームにおいて、ブルーシートの展帳の問題、自治体とのコミュニケーションの問題等、徹底的に検証し、今回の千葉県のような対応が繰り返されないようにすべきと考えるが、政府の見解を伺う。

七 今回の災害による甚大な被害では、自治体を超えて応援職員が派遣されている。被災地は財政的にも苦境に立たされているが、災害対策基本法第九十一条によると、応援職員の費用は被災自治体の負担とされている。また、短期の災害応援については応援自治体が、中長期での出張については被災自治体が負担することとなっており、そのうち八割は特別交付税で措置されるが、残り二割については双方の自治体の負担とされている。

 応援自治体・被災自治体双方の負担をなくす制度を検討すべきだと考えるが、政府の見解を伺う。



   参議院議員塩村あやか君提出避難の在り方や避難所等の災害対策に関する質問に対する答弁書

一について

 避難所の運営については、市町村に対して、「避難所運営ガイドライン」(平成二十八年四月内閣府(防災担当))を参考にするなどして、避難所の運営が円滑かつ統一的に行えるよう、あらかじめ避難所運営の手引を作成し、避難所の良好な生活環境を確保するための運営基準や取組方法を明確にしておくことを促しており、その中で避難所におけるペット対応についても、飼い主が責任をもって避難所でペットを飼育するための居場所の確保等、具体的な対応を検討し、これを当該手引に盛り込むよう促しているところである。

二について

 御指摘の「避難の在り方」及び「避難情報」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、政府としては、避難所について、事前に量的な確保を図り発災時に迅速に提供することができるよう、市町村に対してあらかじめ必要数を指定しておくことを促してきたところである。

三について

 「避難勧告等に関するガイドライン」(平成三十一年三月内閣府(防災担当))においては、「避難勧告等を居住者・施設管理者等に広く確実に伝達するため、また、停電や機器・システム等に予期せぬトラブル等があることも想定し、可能な限り多様な伝達手段を組み合わせることが基本である」としており、お尋ねの「河川敷にいる人(ホームレスを含む。)」については、当該居住者・施設管理者等に含まれている。

四の前段について

 文部科学省としては、公立及び私立の小中学校の施設における便器数の男女別の内訳については把握していないが、学校の施設の計画及び設計における留意事項を示した「小学校施設整備指針」(平成三十一年三月二十二日文部科学省大臣官房文教施設企画・防災部策定)等において、「便所、手洗い、流し、水飲み場等」について「水洗式で、男女別に児童数、利用率等に応じた適切な数と種類の衛生器具を設置することのできる面積、形状」とすることや「高齢者、障害者用の便器、手すり等の設備を設置した便所を、一般の便所内あるいは適当な位置に確保すること」が重要である等と示しているところである。

四の後段について

 「防災基本計画」(令和元年五月三十一日中央防災会議決定)において、市町村は指定避難所について「要配慮者にも配慮した施設・設備の整備に努める」こととされているところである。

 また、市町村において避難所の質の向上を検討する際には、スフィアプロジェクトを参考とするよう、「避難所運営ガイドライン」において周知しているところである。

五について

 お尋ねの「税制優遇措置」及び「補助金制度」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、ボランティア活動に対する各府省庁や地方公共団体の支援施策について内閣府のホームページなどで広く情報提供を行うとともに、災害救援活動などを主たる目的として設立されたNPO法人のうち一定の要件を満たすものへの寄附金については、所得税等の優遇措置を設けているところである。

六について

 政府としては、台風第十五号等において認められた様々な課題について検証・検討するため「令和元年台風第十五号・第十九号をはじめとした一連の災害に係る検証チーム」を立ち上げたところであり、今後、同チームの下に設置した実務者検討会において防災分野等の有識者の御意見も伺いながら、ブルーシートの展張や地方公共団体との連携に係る問題も含め、国及び地方公共団体の初動対応や災害対応に慣れていない地方公共団体への支援等について検証を行うこととしている。

七について

 災害の発生により被災地方公共団体に生ずる応急対策、復旧対策等の事務に要する様々な経費については、災害復旧事業費や罹災世帯数等の被害の規模を示す客観的な数値に基づき、特別交付税により包括的に財政措置を講じているところである。

 これに加え、地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の十七の規定に基づき災害応援のために派遣された職員の受入れに要する経費については、費用を負担する被災地方公共団体に対して、その負担額の八割について特別交付税による財政措置を講じており、公務出張による災害応援のための職員の派遣に要する経費についても、費用を負担する派遣元の地方公共団体に対して、その負担額の八割について特別交付税による財政措置を講じているところである。

 今後とも、被災地方公共団体の実情を踏まえ、その財政運営に支障が生じないよう対処してまいりたい。



 私が提出した「避難の在り方や避難所等の災害対策に関する質問主意書(第二百回国会質問第五五号。以下「前回主意書」という。)に対する答弁書(内閣参質二〇〇第五五号。以下「前回答弁書」という。)を踏まえ、改めて質問する。

一 前回答弁書の「一について」においては、避難所におけるペット対応に関して、政府がこれまで市町村に対して行っている働きかけについての説明を答弁として頂いたが、前回主意書の一で私が問うたのは、この度の台風十五号、十九号、二十一号と低気圧による豪雨がもたらした災害(以下「今回の災害」という。)において、各避難所でペットの同行避難等への対応が出来ていなかったことを踏まえ、避難所運営マニュアルなどへの明記を改めて自治体に促すために通知等を出すことに対する政府の見解である。

 今回の災害を踏まえ、今後、改めてペットの同行避難について、避難所運営マニュアルなどに明記すること等を自治体に促す必要があるのではないか、改めて政府の見解を伺う。

二 前回答弁書の「二について」においては、避難所の量的な確保に向けた取り組みについての説明を答弁として頂いたが、前記主意書の二で私が問うたのは一と同様、今後の対応についてである。

 今回の災害を踏まえ、以下の三点に関する今後の対応方針について、改めて政府の見解を伺う。

1 避難所の在り方や避難方法をどう改善するのか。

2 地域住民等へ、避難勧告等の情報をどう周知するのか。

3 自治体の取り組みをどうサポートするのか。

三 前回答弁書の「三について」においては、「避難勧告等に関するガイドライン」(平成三十一年三月内閣府(防災担当))における「居住者・施設管理者等」の中に、「河川敷にいる人(ホームレスを含む。)」が含まれている旨の答弁を頂いたが、「居住者・施設管理者等」として明文化されていないからこそ、ホームレスなどが「居住者・施設管理者等」の「等」に含まれているとの認識が自治体職員に薄く、今回の災害で路上生活者やホームレスが避難所から排除されたり、溺死したりしたのではないか。

 事実、東京のある自治体では、同ガイドライン通りの運用を行ったにもかかわらず、一名が溺死し、また、河川の濁流に流された二名のホームレスがヘリコプターで救出されている。

 同ガイドラインの見直しについては、国会答弁においても言及がなされており、また、同ガイドラインの中にも、「本ガイドラインは、(中略)今後の「運用実態」や新たな技術・知見等を踏まえ、より良いガイドラインとなるよう見直しを行っていく」との記述があるところである。ホームレスなどへ避難の声がけを行っているだけに止まる現在の行政の運用実態は、十分とは言えない。自治体職員の意識を改め、「避難の実効性」を確実なものとするため、ホームレスなどが「居住者・施設管理者等」の「等」に含まれることを同ガイドライン「等」に明記することが必要ではないか。

 以上の観点から、同ガイドラインについては、今回の災害を踏まえ、見直すべきと考えるが、改めて政府の見解を伺う。

四 前回答弁書の「五について」においては、災害救援活動などを主たる目的として設立されたNPO法人の一部への寄附金に対する所得税等の優遇措置等を講じている旨の説明を答弁として頂いたが、前回主意書の五で私が問うたのは、個人でのボランティア活動やNPO等のボランティア団体に対する税制上の優遇措置や活動費の補助の必要性についてである。

 ボランティア不足解消の一助となるよう、災害対策先進国で採用されている職能支援員等に係る制度を参考に、個人でのボランティア活動に対しては活動費の所得控除又は税額控除、NPO等のボランティア団体に対しては活動費の補助「等」の支援措置の実施を含めた議論が必要と考えるが、改めて政府の見解を伺う。

五 前回答弁書の「七について」において、「災害応援のために派遣された職員の受入れに要する経費については、費用を負担する被災地方公共団体に対して、その負担額の八割について特別交付税による財政措置を講じており、公務出張による災害応援のための職員の派遣に要する経費についても、費用を負担する派遣元の地方公共団体に対して、その負担額の八割について特別交付税による財政措置を講じているところである。」との答弁を頂いた。

 地方公共団体の負担額の八割については特別交付税による財政措置を講じていると言うことだが、残り二割についても双方の地方公共団体の負担をなくす措置を検討すべきと考える。双方の地方公共団体の負担を全てなくす措置については、被災地方公共団体の首長からの要望があるにもかかわらず、実現していない。政府は首長からの要望をどう捉えているのか。

 また、かかる措置が東日本大震災では実現し、昨年の西日本豪雨及び今回の災害では実現しない理由は何か。



   参議院議員塩村あやか君提出避難の在り方や避難所等の災害対策に関する再質問に対する答弁書

一について

 お尋ねについては、令和元年台風第十九号等における避難所運営の課題等を踏まえ、市町村に対して、避難所運営の手引の作成や必要に応じた当該手引の見直しを促してまいりたい。

二について

 政府としては、令和元年台風第十九号等において課題となった事項について、現在検証を行っているところであり、御指摘のような点も含め、必要な検討を行ってまいりたい。

三について

 お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、「避難勧告等に関するガイドライン」(平成三十一年三月内閣府(防災担当))については、中央防災会議防災対策実行会議に設置された「令和元年台風第十九号等による災害からの避難に関するワーキンググループ」において、河川敷等に滞在する者に対する避難勧告等に関する情報提供の在り方も含めて検討を行い、必要に応じて見直し等を行ってまいりたい。

四について

 災害ボランティア活動は、被災者支援において重要な役割を担うことから、先の答弁書(令和元年十一月二十二日内閣参質二〇〇第五五号。以下「前回答弁書」という。)五についてで述べた措置を講じてきたことに加え、内閣府においては、行政・NPO・ボランティア等の三者が連携して円滑に被災者支援に取り組めるようガイドブックを作成する等、ボランティア活動の環境整備に努めてきたところである。

 一方、災害ボランティア活動は、個人の自主性に基づき、一人一人が自己完結で被災地に入っていただくことが基本であることから、交通費、宿泊費等に対する国の財政支援等については慎重な検討が必要であると考えている。

五について

 特定被災地方公共団体(東日本大震災に対処するための特別の財政援助及び助成に関する法律(平成二十三年法律第四十号)第二条第二項に規定する特定被災地方公共団体をいう。以下同じ。)である県並びに特定被災地方公共団体である市町村及びその区域が同条第三項に規定する特定被災区域内にある特定被災地方公共団体以外の市町村については、東日本大震災に係る災害復旧等に従事させるために地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の十七の規定に基づき派遣された職員の受入れに要する経費の全額を震災復興特別交付税により措置してきたところである。

 これは、「東日本大震災からの復興の基本方針」(平成二十三年七月二十九日東日本大震災復興対策本部決定)に基づき、復興財源については、今を生きる世代全体で連帯して負担を分かち合うことを基本とするとの考え方の下、歳出削減や税外収入の確保に最大限努めるとともに、それでもなお足らざる部分について時限的な税制措置を行うことにより確保した上で、地方の復興財源について地方交付税を別枠で手当てしたものである。

 お尋ねの点については、こうした経緯等を踏まえつつ、前回答弁書七についてでお答えしたとおり、今後とも、被災地方公共団体の財政運営に支障が生じないよう対処してまいりたい。

à suivre

今を考えるため情報源を文字として残したい。 そしてまた後日、それを読み返してみたい。 自分自身で考えることをやめないように。