ギャンブル等依存症対策推進基本計画(抜粋)

消費者庁ホームページより


はじめに

 我が国では、多くの人が競馬などの公営競技やぱちんこ等を健全に楽しんでいる。その一方で、これらのギャンブル等にのめり込むことにより、本人及びその家族の日常生活や社会生活に支障を生じさせるのみならず、多重債務や犯罪等の重大な社会問題を生じさせる場合がある。

 ギャンブル等依存症は、早期の支援や適切な治療により、回復等が十分可能であるにもかかわらず、医療機関及び相談支援体制が乏しかったり、治療を行っている医療機関や相談支援機関、自助グループ等の支援に関する情報を得にくかったりするなどの理由により、ギャンブル等依存症である者等が必要な治療及び支援を受けられていない現状がある。

 また、国民全体がギャンブル等依存症に関する関心と理解を深め、その予防を図ることが重要である。

 このような問題意識を背景に、平成 28 年 12 月に成立した特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律(平成 28 年法律第 115 号)の附帯決議においては「ギャンブル等依存症患者への対策を抜本的に強化すること。(中略)カジノにとどまらず、他のギャンブル等に起因する依存症を含め、関係省庁が十分連携して包括的な取組を構築し、強化すること」が決議された。

 政府においては、直ちに「ギャンブル等依存症対策推進関係閣僚会議」を立ち上げ、翌平成 29 年3月には「ギャンブル等依存症対策の強化に関する論点整理」を、同年8月には「ギャンブル等依存症対策の強化について」を取りまとめ、関係行政機関が十分に連携して、スピード感を持って必要な取組を講じてきたところである。

 こうした中、昨年7月、「ギャンブル等依存症対策を総合的かつ計画的に推進し、もって国民の健全な生活の確保を図るとともに、国民が安心して暮らすことのできる社会の実現に寄与すること」を目的として、ギャンブル等依存症対策基本法(平成 30 年法律第 74 号。以下「基本法」という。)が成立し、同年 10 月に施行された。

 基本法は、ギャンブル等依存症対策に関し、国や地方公共団体、関係事業者、国民等の責務を明らかにするとともに、ギャンブル等依存症対策の総合的かつ計画的な推進を図るため、政府に対し、ギャンブル等依存症対策推進基本計画(以下「基本計画」という。)の策定及び施策の推進を義務付けている。

 本基本計画は、基本法に基づき政府が策定する初めての計画であり、これにより、ギャンブル等依存症対策は、新たな法的枠組みの下で、従前にも増してより強力に進められることになった。

 今後、政府においては、本基本計画に基づき、ギャンブル等依存症により不幸な状況に陥る人をなくし、健全な社会を構築するため、地方公共団体や関係機関・団体、事業者等と密接に連携を図りつつ、必要な取組を徹底的かつ包括的に講じていくこととする。


第一章 ギャンブル等依存症対策の基本的考え方等

Ⅰ ギャンブル等依存症対策の現状・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2

 1 ギャンブル等依存症対策の対象

 2 ギャンブル等依存症問題の現状

 3 これまでの政府の取組

Ⅱ ギャンブル等依存症対策の基本理念等・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3

 1 ギャンブル等依存症の発症、進行及び再発の各段階に応じた適切な措置と関係者の

   円滑な日常生活及び社会生活への支援

 2 多重債務、貧困、虐待、自殺、犯罪等の関連問題に関する施策との有機的な連携へ

   の配慮

 3 アルコール、薬物等依存に関する施策との有機的な連携への配慮

Ⅲ ギャンブル等依存症対策推進基本計画の基本的事項・・・・・・・・・・・・・・・ 4

 1 推進体制

 2 位置付けと対象期間

 3 基本的な考え方

Ⅳ ギャンブル等依存症対策の推進に向けた施策について・・・・・・・・・・・・・・ 5

 1 ギャンブル等依存症問題啓発週間の実施

 2 都道府県における推進計画の策定 


第二章 取り組むべき具体的施策

Ⅰ 関係事業者の取組:基本法第 15 条関係

Ⅰ-1 競馬における取組【農林水産省】

第1 競馬における広告・宣伝の在り方

 1 全国的な指針の策定による広告・宣伝の抑制

【目標と具体的取組】

競馬主催者等は、広告・宣伝が射幸心をあおるものにならないよう、平成 31 年度中に、広告・宣伝に関する全国的な指針の策定に着手し、平成 33 年度までに公表。同指針には、注意喚起標語の一定の大きさや時間の確保、主要レースの広告費の抑制等を盛り込むことを検討。

(1)現状

これまで、競馬主催者等において、全てのレース開催告知ポスターやテレビコマーシャル、新聞・雑誌広告等に、「馬券は 20 歳になってから ほどよく楽しむ大人の遊び」などの表示を順次実施し、広く一般に注意喚起を行ってきた。

また、各競馬主催者において「馬券は 20 歳になってから ほどよく楽しむ大人の遊び」の注意喚起標語ステッカーを各競馬場及び場外馬券売場の馬券発売機等に掲示している。

さらに、これまで一部の競馬主催者による実施にとどまっていた「馬券の購入は 20歳になってから」という注意喚起標語の競馬場内のビジョンによる放映や、20 歳未満の者の馬券購入が禁止されている旨の場内放送については、平成 29 年8月から、全ての競馬主催者において実施している。

(2)課題

参議院・内閣委員会におけるギャンブル等依存症対策基本法案に対する附帯決議第5項(※)の趣旨も踏まえ、特に大学生・社会人となる青少年や若い世代を対象に、ギャンブル等依存症問題に係る知識の普及に徹底して取り組む必要がある。

  ※五 政府は、ギャンブル等依存症問題啓発週間の期間を定めた理由が、新年度に新た

  に大学生・社会人となった青少年や若い世代に対し、ギャンブル等依存症問題への関

  心と理解を深める機会を設けること等に鑑み、青少年に対しギャンブル等依存症問題

  に係る知識の普及に徹底して取り組むこと。

(3)対策

競馬主催者等は、SNS 等も活用し、ギャンブル等依存症に関する各般の普及啓発活動を通年実施する。さらに、平成 31 年度から、他の公営競技施行者等と共同で、毎年度の啓発週間をターゲットに、新たに大学生・社会人となった青少年や若い世代に対し、ギャンブル等依存症問題の関心と理解を深めるため、SNS 等も活用し、発生抑止につながる知識の普及といった啓発活動(ポスター、セミナー等)に継続的に取り組む。 


Ⅰ-2 競輪・オートレースにおける取組【経済産業省】 

第1 競輪・オートレースにおける広告・宣伝の在り方

 1 全国的な指針の策定による広告・宣伝の抑制

【目標と具体的取組】

競輪については JKA 及び全国競輪施行者協議会(全輪協)、オートレースについては JKA 及び全国小型自動車競走施行者協議会(全動協)は、それぞれ、広告・宣伝が射幸心をあおるものにならないよう、平成 31 年度中に、広告・宣伝に関する全国的な指針の策定に着手し、平成 33 年度までに公表。同指針には、注意喚起標語の一定の大きさや時間の確保等を盛り込むことを検討。

(1)現状

競輪・オートレースの広告については、メディア側の基準(「一般社団法人日本民間放送連盟放送基準」等)に従い、車券購入を想起させる表現、高額的中がある旨の表現、ゴール映像等を用いないなど射幸心をあおる内容にならないよう実施されている。

平成 29 年3月、20 歳未満の者のアクセス制限に関する注意喚起標語を決定し、同年4月から順次、各競輪場・オートレース場の施行者が作成する全てのレースの開催告知ポスター、公益財団法人 JKA(以下「JKA」という。)が作成するテレビコマーシャル、新聞・雑誌広告等に注意喚起標語を掲載している。

 <注意喚起標語>

  競輪:車券の購入は20歳になってから。競輪は適度に楽しみましょう。

  オートレース:車券の購入は20歳になってから。オートレースは適度に楽しみましょう。

(2)課題

競輪・オートレース業界としての広告指針はないため、作成する必要がある。

(3)対策

広告が射幸心をあおる内容にならないようにするため、メディア側で策定・実施している広告指針等を参考に、平成 31 年度から、競輪については JKA 及び公益社団法人全国競輪施行者協議会(以下「全輪協」という。)、オートレースについては JKA 及び全国小型自動車競走施行者協議会(以下「全動協」という。)において、自主的に広告指針の作成について検討を開始し、平成 33 年度までに公表する。

同指針の作成に当たっては、テレビコマーシャル等で、注意喚起標語を視聴者が十分に認識できるよう、一定の文字の大きさと秒数を確保するなど広告における注意喚起について盛り込むことを検討する。


Ⅰ-3 モーターボート競走における取組【国土交通省】 

第1 モーターボート競走における広告・宣伝の在り方

 1 全国的な指針の策定による広告・宣伝の抑制

【目標と具体的取組】

全国モーターボート競走施行者協議会、日本モーターボート競走会、日本財団、日本モーターボート選手会及び BOATRACE 振興会(モーターボート競走関係団体)は、広告・宣伝が射幸心をあおるものにならないよう、平成 31 年度中に広告・宣伝に関する全国的な指針の策定に着手し、平成 33 年度までに公表。同指針には、注意喚起標語の一定の大きさや時間の確保等を盛り込む。 

(1)現状

モーターボート競走のテレビコマーシャルは、従前から、メディア側の基準(「一般社団法人日本民間放送連盟放送基準」等)に従い、舟券購入を想起させる表現、高額的中がある旨の表現、ゴール映像等を用いないなど射幸心をあおる内容にならないよう実施されている。

また、施行者は、ギャンブル等依存症の注意喚起のための標語(「無理のない資金で、余裕を持ってお楽しみください。」)を掲載したポスターを作成し、全ての競走場及び場外舟券売場において掲示している(平成 29 年3月)。全国的なテレビコマーシャル(平成 29 年9月)や開催告知ポスター(平成 29 年 10 月)にも注意喚起標語を掲載している。

(2)課題

広告・宣伝の在り方について、現在、施行者側による自主的な指針がないことに加え、注意喚起は、競走場や場外舟券売場に掲出した啓発ポスターや、テレビコマーシャル、開催告知ポスター、オフィシャルウェブサイト等において実施しているものの、更なる啓発に努めるため、広告・宣伝の全国的な指針の策定が必要である。

(3)対策

一般社団法人全国モーターボート競走施行者協議会、一般財団法人日本モーターボート競走会、公益財団法人日本財団、公益社団法人日本モーターボート選手会及び一般財団法人 BOATRACE 振興会(以下「モーターボート競走関係団体」という。)は、広告・宣伝を行うに当たり、その内容が射幸心をあおるものとならないようにするとともに、注意喚起の更なる啓発を図るため、平成 31 年度から、メディア側の基準を参考に広告・宣伝に関する全国的な指針の策定に着手し、平成 33 年度までに公表する。

同指針には、テレビコマーシャルにおいて、注意喚起標語を視聴者が十分に視認できるよう、一定の文字の大きさと秒数を確保するなどの内容を盛り込む。


Ⅰ-4 ぱちんこにおける取組【警察庁】 

第1 ぱちんこにおける広告・宣伝の在り方

 1 全国的な指針の策定による広告・宣伝の抑制

【目標と具体的取組】

ぱちんこ業界は、広告・宣伝がぱちんこへの依存問題の発生の抑止に資するものとなるよう、平成 31 年度中に、広告・宣伝に関する全国的な指針を策定し公表。同指針には、注意喚起標語の一定の大きさや時間の確保等を盛り込むことを検討。 

(1)現状

風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(昭和 23 年法律第 122 号。以下「風営適正化法」という。)第 16 条において、ぱちんこ営業者は、その営業につき、営業所周辺における清浄な風俗環境を害するおそれのある方法で広告・宣伝をすることが禁止されており、ぱちんこ業界においては、同法で禁止される広告・宣伝が行われないよう、広告・宣伝の内容に関する自主規制の策定などの取組が行われている。

また、依存(のめり込み)問題の発生を未然に防ぐため、平成 26 年 10 月、業界団体が定めた共通標語「パチンコ・パチスロは適度に楽しむ遊びです。のめり込みに注意しましょう。」をぱちんこ営業所のチラシ等に一定の大きさで掲載する取組を開始した。その後に策定された「パチンコ店における依存(のめり込み)問題対応ガイドライン」及び「パチンコ店における依存(のめり込み)問題対応運用マニュアル」(以下「依存(のめり込み)問題対応ガイドライン等」という。)においては、ぱちんこへの依存問題の相談機関であるリカバリーサポート・ネットワーク(以下「RSN」という。)の相談窓口と併せ、共通標語のテレビ、ラジオ、新聞、折込チラシなどの各種媒体における活用、ぱちんこ営業所経営企業及びぱちんこ営業所のウェブサイトにおける掲載、ぱちんこ営業所内のデジタルサイネージにおける表示等を促すなど、ぱちんこへの依存防止対策を推進している。

(2)課題

ギャンブル等依存症により不幸な状況に陥る人をできるだけ少なくする必要性が指摘される中、広告・宣伝がぱちんこへの依存問題の発生の抑止に資するものとなるよう指針を策定する必要がある。

(3)対策

現在運用している依存(のめり込み)問題対応ガイドライン等における広告・宣伝に係る規定を基に、平成 31 年度中に、業界において策定することとしているぱちんこへの依存防止対策に係る実施規程において、広告・宣伝に関する全国的な指針を規定する。

同指針には、テレビ、ラジオ、新聞、折込チラシなどの各種媒体における広告・宣伝について、他の業界における自主基準等も参考として、注意喚起の文言を一般の方が十分に視認できるよう、一定の文字の大きさと秒数を確保するなどの表現方法の基準等について盛り込むことを検討する。 


Ⅱ 相談・治療・回復支援:基本法第 16~19 条関係

第1 相談支援:基本法第 17 条関係

第2 治療支援:基本法第 16 条関係

第3 民間団体支援:基本法第 19 条関係

第4 社会復帰支援:基本法第 18 条関係


Ⅲ 予防教育・普及啓発:基本法第 14 条関係

Ⅳ 依存症対策の基盤整備:基本法第 20・21 条関係

Ⅴ 調査研究:基本法第 22 条関係

Ⅵ 実態調査:基本法第 23 条関係 

Ⅶ 多重債務問題等への取組 

1 貸金業・銀行業における貸付自粛制度の適切な運用の確保及び当該制度を必要とする者への的確な周知の実施【金融庁】

【目標と具体的取組】 

金融庁は、引き続き、モニタリング等を通じ、貸付自粛制度の適切な運用を確保する。また、平成 31 年度中に、貸付自粛制度の適切な運用を確保するため、民間金融機関団体と協力して、効果的な周知方法を検討・実施。 

(1)現状

平成 30 年4月、日本貸金業協会(以下「貸金業協会」という。)において貸付自粛制度を拡充し、ギャンブル等依存症を対象に追加した。一般社団法人全国銀行協会(以下「全銀協」という。)においても、平成 31 年3月より、同制度の運用を開始した。

(2)課題

銀行業界においては、同制度の運用を開始したばかりであり、同制度を必要とする者への周知・普及を図るなど、取組の適切な運用を確保する必要がある。

(3)対策

金融庁は、当該制度について、モニタリング等を通じ、適切な運用を確保する。

また、当該制度を運営する民間金融機関団体と連携して、周知用チラシを利用者の目につきやすい場所に設置するなど、当該制度を必要とする者に的確に伝わるような周知方法を検討し、民間金融機関団体や各金融機関等において、平成 31 年度中に周知するよう促す。

さらに、貸付自粛申告またはその撤回の申込みがあった場合には、民間金融機関団体からギャンブル等依存症に関する相談拠点につなげる取組について検討に着手する。

加えて、当該制度を運営する民間金融機関団体による、ギャンブル等依存症に関する相談拠点との連携体制を構築するほか、PDCA サイクルを通じ、適切に見直しを行っていく。


2 ギャンブル等依存症に関する相談拠点と民間金融機関団体との連携促進【金融庁】

【目標と具体的取組】

金融庁は、民間金融機関団体における相談窓口とギャンブル等依存症に関する相談拠点との連携を促進するため、平成 31 年3月に改訂したギャンブル等依存症に関する対応マニュアルの活用を推進。民間金融機関団体の研修参加を促進。

(1)現状

全銀協及び貸金業協会における相談窓口と、ギャンブル等依存症に関する相談拠点との具体的連携が必ずしも十分でない。

(2)課題

全銀協及び貸金業協会への相談者がギャンブル等依存症であると思われる場合の、ギャンブル等依存症に関する相談拠点との具体的連携体制を更に整備する必要がある。

(3)対策

金融庁は、関係機関等の間における連携協力体制の整備に関する記述を追加するなど、平成 31 年3月に基本法の内容に即して改訂した対応マニュアルについて、その活用を推進するとともに、全銀協及び貸金業協会に対し、適切な相談機関につなげられるよう、改訂したマニュアルを活用した研修への参加を促す。

また、平成 31 年度以降、全銀協及び貸金業協会の相談窓口を含む多重債務相談員等に対しヒアリング等を行い、現場のニーズを踏まえた対応マニュアルの改訂を行うとともに、各金融機関等におけるギャンブル等依存症に関する相談拠点の周知などの取組について検討を促す。 


3 違法に行われるギャンブル等の取締りの強化【警察庁】

【目標と具体的取組】

警察庁は、平成 31 年度中に、都道府県警察に対して、違法なギャンブル等の取締りの指示を徹底するなどにより、違法なギャンブル等の排除と風俗環境の浄化を推進。 

(1)現状

警察においては、違法な賭博店等の厳正な取締りを推進しており、平成 30 年中、

警察では、店舗に設置されたゲーム機等使用に係る賭博事犯を 42 件検挙している。

(2)課題

厳正な取締りにもかかわらず、賭博事犯が依然として発生しており、また、警察の

取締りから逃れるための対策も巧妙化している。

(3)対策

警察においては、引き続き、違法な賭博店等に係る情報の収集に努めるとともに、厳正な取締りを実施していくこととしているところ、参議院・内閣委員会におけるギャンブル等依存症対策基本法案に対する附帯決議第 11 項(※)も踏まえ、平成 31 年度中に、警察庁から都道府県警察に対して取締りの指示を徹底するなど、違法ギャンブル等の排除と風俗環境の浄化を推進する。

  ※十一 警察当局は、違法に行われるギャンブル等について、取締りを一層強化

   すること。

à suivre

今を考えるため情報源を文字として残したい。 そしてまた後日、それを読み返してみたい。 自分自身で考えることをやめないように。