教科書検定基準の近隣諸国条項に関する質問主意書
参議院ホームページ 質問主意書より
松沢 成文
教科書検定基準の近隣諸国条項に関する質問主意書
我が国の義務教育諸学校教科用図書検定基準(平成二十九年八月十日文部科学省告示第百五号)には、「近隣のアジア諸国との間の近現代の歴史的事象の扱いに国際理解と国際協調の見地から必要な配慮がされていること」という、いわゆる「近隣諸国条項」が盛り込まれている。
この近隣諸国条項は誤報がきっかけで生まれた。一九八二年に、文部省(現文部科学省)が教科書検定で「侵略」を「進出」に書き換えさせたというマスコミの一斉報道に、中国や韓国が猛反発をした。これが誤報だったにもかかわらず、宮沢喜一内閣官房長官(当時)は「教科書の記述を是正する」、「検定基準を改め、近隣諸国との友好・親善に配慮する」旨中韓両国に約束する談話を出した。この宮沢談話に基づいて作成されたのが近隣諸国条項である。その後、この規定は、中国や韓国が日本の外交や教育を押さえつける道具として利用されている。そこで、以下質問する。
一 二〇一三年四月十日の衆議院予算委員会で、安倍晋三首相は、教科書検定基準について「改正教育基本法の精神が生かされていない。(教科書をチェックする)検定官に認識がなかったのではないか」との旨批判し、検定制度見直しの必要性を強調した。同様に下村博文文部科学大臣(当時)も、教科書検定基準について、「現状と課題を整理し、見直しを検討する」旨述べた。これらの発言は質疑の趣旨から近隣諸国条項の見直しを念頭においた発言と理解される。既に発言から七年が経過しているが、検討状況はどのようになっているのか。いつ見直すのか。また、我が国の国益を損なう近隣諸国条項を早急に検定基準から削除すべきであると考えるがどうか。
二 近隣諸国条項と同様の規定が中国や韓国にもあるのであれば、外交の相互主義の一つとして認める理屈もあるが、中国や韓国にはこのような規定は存在しない。検定基準から近隣諸国条項を削除せず、このまま残しておくのであれば、相互主義に基づき、中国や韓国などの近隣諸国に対しても教科書の審査に際し、「近現代の歴史的事象の扱いに国際理解と国際協調の見地から必要な配慮」を求めるべきではないのか。
答弁書
一について
お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、教科用図書検定制度の見直しについては、御指摘の質疑の後、平成二十五年十一月十五日に、文部科学省において、今後の教科書改革に向けた総合的な政策パッケージとして「教科書改革実行プラン」を発表し、教科用図書検定調査審議会の審議を経て、平成二十六年に教科用図書検定基準等を改正したところである。また、教科用図書検定基準におけるいわゆる「近隣諸国条項」の見直しについては、現時点では決まっておらず、当該条項が、昭和五十七年八月二十六日の内閣官房長官談話の趣旨を受け、同審議会の答申に基づき教科用図書検定基準に加えられたものであるという経緯を踏まえる必要がある。
二について
お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、教科書制度の在り方は各国の判断に委ねられるべきものであると考えており、御指摘の「配慮」を諸外国に対し求めることは考えていない。
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