あおり運転の対応に関する再質問主意書
衆議院ホームページより
あおり運転の対応に関する質問主意書
近年、あおり運転による痛ましい事故の報道が増えている。平成二十九年六月に神奈川県の東名高速であおり運転を受け停車した車にトラックが追突し、乗車していた夫婦が亡くなったような重大事故が後を絶たない。
本年八月十日にも茨城県の常磐自動車道にて、あおり運転を受け停車させられた男性が、容疑者から顔を殴られる傷害事件が発生し、メディアでも大きく取り上げられ世の中を震撼させた。
現在の道路交通法には『あおり運転』の違反規定がなく、警察はその他の違反規定や刑法の暴行罪などを適用して取締りを行っている。
警察庁は、平成三十年一月に取締強化を全国に指示し、同年の道交法(車間距離保持義務違反)の取締件数は、平成二十九年の一・八倍となる約一万三千件となった。
また、あおり運転に関する啓発活動も関係機関、団体と連携をとり広報活動を行っている(平成三十年交通安全白書)。
しかしながら、あおり運転に関する事件の報道は絶えない。
あおり運転に対する国民の関心度は高く、厳正な対処を望む声が高まる中、このような現状を政府は、どのように認識をしているのか、その対策方法も含めて政府の見解を確認したく、以下質問する。
一 道路交通法では、いわゆる「あおり運転」がどのような行為を指すか定義されていないものと認識しているが、他の法令等において定義されているものがあるか。定義されていないのであれば、新たに定義する必要があると考えているのか。定義する場合はどのような行為をこれに含めるのか。政府の所見を伺いたい。
二 警察庁は、平成三十年一月十六日付で「いわゆる「あおり運転」等の悪質・危険な運転に対する厳正な対処について(通達)」を発出しているが、同文書について、
1 警察庁の言う「いわゆる「あおり運転」等の悪質・危険な運転」とは具体的にどのような行為を指して定義しているのか。政府の見解を伺いたい。
2 道路交通法違反や危険運転致死傷罪等いくつかの法令を挙げているが、言及されている法令等の規定による罰則を個々に示されたい。
3 「いわゆる「あおり運転」等の悪質・危険な運転」に対して、広報啓発活動を関係機関・団体と連携し取り組んでいるとのことだが、具体的にどのような行為の抑制を狙いとし、その効果を期待して行っているのか。また、その成果はどのような行為に対する検挙件数が減少することによって効果検証をされるものなのか。さらには、通達発出後から現在までに数値として効果があったと認識しているのか。それぞれの詳細について政府の見解を伺いたい。
三 平成三十一年二月二十五日の衆議院予算委員会の質疑において、取締強化の結果、検挙数が増加した旨の答弁がなされていたが、該当する行為全体の増減があったと認識しているか。
四 平成三十一年三月十二日の参議院内閣委員会の質疑では、ドライブレコーダーが裁判の証拠として採用されることがある旨の答弁があったが、客観的証拠として重要であると考えるか。また、ドライブレコーダーの普及を進める必要があると考えるか。必要な場合、どのような方法でどの程度普及することが望ましいと考えているのか。政府の所見を伺いたい。
五 現在、あおり運転行為を直接処罰する規定がなく、警察庁は、「いわゆる「あおり運転」等の悪質・危険な運転」に対して、「道路交通法違反のみならず、危険運転致死傷罪(妨害目的運転)、暴行罪等あらゆる法令を駆使して、厳正な捜査の徹底」を行うとしているが、政府は現行法令の規定や罰則でこのような運転を十分に抑止することができると考えているのか。また現行の規定を見直す必要があるとすればどのような規定を設けるべきと考えているのか、政府の所見を伺いたい。
六 道路交通法上の車間距離保持義務違反等にあたる違反行為の中には、妨害を目的とする悪質・危険なものもあれば、そうでないものもあり得る。いずれの違反行為も許容されるべきものでないことは当然であるが、相手を妨害する行為の態様に応じて、違反類型や罰則等の軽重について検討する必要があり、道路交通法にあおり運転罪をはっきりと規定し、抑止効果を高めるべきだという意見もあるが、政府はどのように考えているのか所見を伺いたい。
七 令和元年九月十一日の朝日新聞朝刊等において、あおり運転の対策のため道路交通法改正案を来年の通常国会に提出することを目指す旨が報じられているが、これは事実か。事実であれば、どのような内容を検討しているのか。二の通達で言及されている法案は複数あるが、道路交通法以外の改正は検討しているのか。政府の見解を伺いたい。
衆議院議員中谷一馬君提出あおり運転の対応に関する質問に対する答弁書
一の前段及び二の1について
いわゆる「あおり運転」については、法令上の定義はなく、また、御指摘の通達(以下単に「通達」という。)においても、「いわゆる「あおり運転」等の悪質・危険な運転」について特段の定義を設けていない。
一の中段及び後段並びに五から七までについて
警察においては、これまでも、通達に従って、いわゆる「あおり運転」等の悪質かつ危険な運転について、あらゆる刑罰法令を適用した厳正な取締りの徹底等の諸対策を着実に進め、こうした運転の抑止を図ってきたところである。
他方で、現在、警察庁においては、いわゆる「あおり運転」の厳罰化を含め、道路交通法(昭和三十五年法律第百五号)の罰則の強化等について、様々な観点から検討を行っているところであり、同法の規定の在り方等に係るお尋ねについては、現時点でお答えする段階にない。
二の2について
お尋ねについては、①通達で言及している罪又は刑罰法令に触れる行為、②罰則及び③法定刑を刑罰法令ごとにお示しすると、次のとおりである。
(一) 刑法(明治四十年法律第四十五号)
①「傷害」 ②同法第二百四条 ③十五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金
①「暴行罪」又は「暴行」 ②同法第二百八条 ③二年以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料
①「脅迫」 ②同法第二百二十二条 ③二年以下の懲役又は三十万円以下の罰金
①「器物損壊」 ②同法第二百六十一条 ③三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金若しくは科料
(二) 道路交通法
①「急ブレーキ禁止違反」 ②同法第百十九条第一項第一号の三 ③三月以下の懲役又は五万円以下の罰金
①「車間距離不保持」又は「車間距離保持義務違反」 ②同法第百十九条第一項第一号の四(高速自動車国道等において行われた場合)又は第百二十条第一項第二号(高速自動車国道等以外において行われた場合) ③三月以下の懲役若しくは五万円以下の罰金(高速自動車国道等において行われた場合)又は五万円以下の罰金(高速自動車国道等以外において行われた場合)
①「追越しの方法違反」 ②同法第百十九条第一項第二号の二 ③三月以下の懲役又は五万円以下の罰金
①「安全運転義務違反」 ②同法第百十九条第一項第九号(故意によるものである場合)又は第二項(過失によるものである場合) ③三月以下の懲役若しくは五万円以下の罰金(故意によるものである場合)又は十万円以下の罰金(過失によるものである場合)
①「進路変更禁止違反」 ②同法第百二十条第一項第二号若しくは第三号又は第二項 ③五万円以下の罰金
①「減光等義務違反」 ②同法第百二十条第一項第八号又は第二項 ③五万円以下の罰金
①「初心運転者等保護義務違反」 ②同法第百二十条第一項第九号 ③五万円以下の罰金
①「警音器使用制限違反」 ②同法第百二十一条第一項第六号 ③二万円以下の罰金又は科料
(三) 自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(平成二十五年法律第八十六号)
①「危険運転致死傷罪(妨害目的運転)」 ②同法第二条第四号 ③十五年以下の懲役(人を負傷させた場合)又は一年以上の有期懲役(人を死亡させた場合)
二の3について
御指摘の広報啓発活動については、いわゆる「あおり運転」等の悪質かつ危険な運転を広く抑止するために実施しているものであるところ、警察庁としては、当該広報啓発活動の結果もあって、こうした運転の抑止に向けた社会的気運の醸成が着実に進んできているものと認識している。
他方で、御指摘の広報啓発活動の効果を特定の違反行為に係る検挙件数の増減のみをもって検証することについては、当該増減には当該広報啓発活動以外の様々な要因も影響しているものと考えられることから、困難であると認識している。
三について
平成三十年中の車間距離保持義務違反の検挙件数は、平成三十一年二月二十五日の衆議院予算委員会において山本国務大臣(当時)が答弁しているとおり、平成二十九年中の当該件数の約一・八倍となる約一万三千件であったところであるが、他方で、実際に行われた車間距離保持義務違反に該当する行為の全てを網羅的に把握することは難しく、当該行為全体の増減についてお答えすることは困難である。
四について
ドライブレコーダーを用いて撮影された映像は、一般に、いわゆる「あおり運転」等の悪質かつ危険な運転の重要な客観的証拠となり得るものであり、こうした運転に係る捜査の一助となっているものと認識している。
このため、政府としては、これまでも、様々な機会を通じてドライブレコーダーの装着を国民に呼び掛けるなど、その普及のための取組を進めてきたところであり、引き続き、こうした取組を通じてその広範な普及に努めていきたいと考えている。
令和元年十月四日提出質問第一五号「あおり運転の対応に関する質問主意書」に対する答弁書において、以下の答弁を受けた。
中谷一馬 質問
「一 道路交通法では、いわゆる「あおり運転」がどのような行為を指すか定義されていないものと認識しているが、他の法令等において定義されているものがあるか。定義されていないのであれば、新たに定義する必要があると考えているのか。定義する場合はどのような行為をこれに含めるのか。政府の所見を伺いたい。」
「五 現在、あおり運転行為を直接処罰する規定がなく、警察庁は、「いわゆる「あおり運転」等の悪質・危険な運転」に対して、「道路交通法違反のみならず、危険運転致死傷罪(妨害目的運転)、暴行罪等あらゆる法令を駆使して、厳正な捜査の徹底」を行うとしているが、政府は現行法令の規定や罰則でこのような運転を十分に抑止することができると考えているのか。また現行の規定を見直す必要があるとすればどのような規定を設けるべきと考えているのか、政府の所見を伺いたい。」
「六 道路交通法上の車間距離保持義務違反等にあたる違反行為の中には、妨害を目的とする悪質・危険なものもあれば、そうでないものもあり得る。いずれの違反行為も許容されるべきものでないことは当然であるが、相手を妨害する行為の態様に応じて、違反類型や罰則等の軽重について検討する必要があり、道路交通法にあおり運転罪をはっきりと規定し、抑止効果を高めるべきだという意見もあるが、政府はどのように考えているのか所見を伺いたい。」
「七 令和元年九月十一日の朝日新聞朝刊等において、あおり運転の対策のため道路交通法改正案を来年の通常国会に提出することを目指す旨が報じられているが、これは事実か。事実であれば、どのような内容を検討しているのか。二の通達で言及されている法案は複数あるが、道路交通法以外の改正は検討しているのか。政府の見解を伺いたい。」
内閣総理大臣 安倍晋三名 答弁
「一の中段及び後段並びに五から七までについて 警察においては、これまでも、通達に従って、いわゆる「あおり運転」等の悪質かつ危険な運転について、あらゆる刑罰法令を適用した厳正な取締りの徹底等の諸対策を着実に進め、こうした運転の抑止を図ってきたところである。他方で、現在、警察庁においては、いわゆる「あおり運転」の厳罰化を含め、道路交通法(昭和三十五年法律第百五号)の罰則の強化等について、様々な観点から検討を行っているところであり、同法の規定の在り方等に係るお尋ねについては、現時点でお答えする段階にない。」
この答弁に関して、以下質問する。
一 一の中段及び後段並びに五から七までの質問について現時点でお答えする段階にないとのことであるが、それぞれについていつ頃を目途に結論を出そうと考えているのか、政府の見解を伺いたい。
二 株式会社エアトリが行った「あおり運転の罰則」に関する調査によれば、あおり運転の厳罰化については、八十七・五%の人が賛成という結果になり、ほとんどの人が厳罰化を求めているという結果となった。
一方で、あおり運転の罰則が「免許停止」となっていることに対しては、「十分な罰則である」と回答したのは四十二・九%、「罰則としては不十分である」と回答したのは四十七・七%と、意見が分かれた。
そうした中、現状の制度では「事故を引き起こす危険性が高い」と判断された場合でも「免許停止」が最も重い処分となっているが、警察庁は「免許の取り消し」を検討しているとの報道がなされた。
そこで伺うが、現在どのような検討がなされ、どのような運転をしたものを「免許の取り消し」として処分することを検討しているのか、政府の所見を伺いたい。
衆議院議員中谷一馬君提出あおり運転の対応に関する再質問に対する答弁書
一について
お尋ねについては、できる限り早期に結論を得たいと考えているところであるが、現時点において結論を得る時期についてお答えすることは困難である。
二について
お尋ねについては、いわゆる「あおり運転」を行った運転者の危険性を踏まえ、運転免許の取消し等の厳正な行政処分が可能となるよう、現在、警察庁において、検討を行っているところである。
0コメント