地方公共団体に対する計画等の策定の義務付けに関する質問主意書
参議院ホームページより
令和二年五月二十六日
吉川 沙織
参議院議長 山東 昭子 殿
地方公共団体に対する計画等の策定の義務付けに関する質問主意書
地方公共団体の自治事務について国が法令で実施やその方法を縛る義務付け・枠付けは、第二次地方分権改革において見直しが進められてきた。これに関し、以下質問する。なお、本院においては質問主意書に対する答弁延期等に関する議院運営委員会理事会決定はないこと、各議院の自律性が尊重されるべきことに留意し、現下の状況を踏まえ、必要がある場合には、国会法第七十五条第二項後段に基づく答弁延期を躊躇なく活用されたい。
一 地方公共団体に対し計画等の策定を義務付ける規定について、地方分権改革推進委員会の第三次勧告(平成二十一年十月七日。以下「第三次勧告」という。)では、規定の廃止、「できる」規定化又は努力義務化のいずれかの措置を講ずることとしている。これに関し、地方公共団体からは、計画等の策定に関する規定を有する法律が増加していること、当該法律における(1)計画等の策定を義務付ける規定、(2)計画等の策定を「できる」とする規定、(3)計画等の策定を努力義務とする規定のうち、(3)の割合が増加傾向にあること等が指摘されている。
1 (1)から(3)のそれぞれについて、当該規定を含む法律の数及び当該規定を定める条項の数を把握しているか明らかにされたい。把握している場合、それぞれの件数を明らかにされたい。
2 (3)の割合が増加傾向にあるとの指摘について政府の見解を明らかにされたい。また、(3)の増加傾向は、(1)を(3)とする法改正が行われたことによるだけでなく、(3)を定める条項を創設する法改正が増加していることも要因であると考えられるが、政府の見解を明らかにされたい。
3 (1)、(2)又は(3)を創設する条項を含む新規制定法律について、平成二十二年以降の件数をそれぞれ年ごとに明らかにされたい。その際、閣法か議員立法かを区別されたい。当該件数を把握していない場合、地方公共団体から前述の指摘及び後記二の指摘がなされていることを踏まえ、今後把握し、公表するべきと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。
二 前記一の(2)及び(3)について、計画等を策定することが財政措置の条件となっている、策定状況が国から公表される等の理由から、実態としては前記一の(1)と変わらない旨の指摘が地方公共団体からなされている。政府は当該指摘のような実態となっていることを認識しているか明らかにされたい。認識している場合、前記一の(2)及び(3)が、実態としては前記一の(1)と変わらない形で機能することのないよう、いわゆる提案募集方式に基づく地方からの提案等を待つまでもなく、政府が主体的に法制上及び運用上の対応をとるべきと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。
三 第三次勧告では、「義務付け・枠付けに関する立法の原則」との項目において、「将来的にもこの見直しの実効性を担保するため、今後、制定、改正される法律は、今次の地方分権改革で定立した義務付け・枠付けに係る国の立法に関する原則、すなわち、第二次勧告(中略)で明らかにしている、義務付け・枠付けの見直しの具体的な方針に沿ったものとなるようにすべきである。このためには、地方分権改革推進計画において、この義務付け・枠付けに関する原則を明確に位置付けるべきである。」とし、「さらに、今後、この原則について法律上明確にすることも検討すべきである。」としている。
1 地方分権改革推進計画(平成二十一年十二月十五日閣議決定)においては、当該「義務付け・枠付けに関する原則」は明記されていないように見受けられるが、この理由を明らかにされたい。
2 地方分権改革推進計画の策定以後の政府による地方分権改革の取組の中で、当該「義務付け・枠付けに関する原則」を閣議決定又は法律上明確にすることを検討したことがあれば、その内容を明らかにされたい。検討したことがない場合、あるいは、検討したことはあるが実現しなかった場合、その理由を明らかにされたい。
四 第三次勧告では、「チェックのための仕組み」との項目において、「今後、政府が国会に提出する法律案については、この義務付け・枠付けに関する立法の原則に沿ったものとなるよう、各府省における法案の立案段階でこの原則をチェックする政府部内の手続を確立すべきである。」としている。
1 当該「政府部内の手続」が各府省において確立されているか明らかにされたい。確立されている場合、具体的にどのような手続により第三次勧告にいう「義務付け・枠付けに関する立法の原則」をチェックしているのか説明されたい。確立されていない場合、その理由を明らかにされたい。
2 閣法の法令協議においては、地方分権改革を所掌する内閣府、あるいは、地方自治を所掌する総務省が、地方公共団体の自主性の強化や自由度の拡大の観点から必要な意見を述べているものと考えるが、両府省は、当該閣法が「義務付け・枠付けに係る国の立法に関する原則」に沿ったものとなっているかの確認や、地方分権改革推進委員会の第二次勧告(平成二十年十二月八日)にいう「義務付け・枠付けの存置を許容する場合等のメルクマール」への該当性の判断をしているか明らかにされたい。
3 閣法については、「義務付け・枠付けに係る国の立法に関する原則」及び「義務付け・枠付けの存置を許容する場合等のメルクマール」に抵触するものは国会に提出されないという理解でよいか政府の見解を明らかにされたい。
五 前記四はあくまで「政府部内の手続」であって、議員立法はその範疇から外れる。したがって、議員立法についても「義務付け・枠付けに関する立法の原則」に沿っているものとなるようにするためには、同原則を法律上明確にすることが必要であると考えるが、政府の見解を明らかにされたい。
六 地方自治法第二百六十三条の三第五項は、いわゆる事前情報提供制度を規定しており、各大臣は、地方公共団体に対し新たに事務又は負担を義務付けると認められる施策の立案をしようとする場合、地方六団体が内閣に意見を申し出ることができるよう、地方六団体に対して当該施策の内容となるべき事項を知らせるために適切な措置を講ずるものとされている。
1 法律に前記一の(2)及び(3)を創設することは、「地方公共団体に対し新たに事務又は負担を義務付けると認められる施策の立案」に該当するか政府の見解を明らかにされたい。
2 同制度に基づく情報提供の時期について、第三次勧告では、具体例を挙げた上で、地方六団体が「法律案の内容を知り、それに意見を提出した場合、地方側の意見を踏まえた法律案の修正等が可能な時期とすべきである。」としている。各大臣が第三次勧告に沿った時期に情報提供しているか実状を明らかにされたい。また、各大臣が情報提供をしているか、その時期が適切であるかを内閣府又は総務省が常時把握する仕組みとなっているか明らかにされたい。
3 前記二の指摘のように、法律の条文上は地方公共団体に事務又は負担を義務付ける規定とはなっていなくても、実態としては義務付けと変わらない場合がある。したがって、閣法については、地方公共団体に事務又は負担を義務付ける規定の有無にかかわらず、地方六団体による意見具申を踏まえた修正等を行うことができるよう、その内容を前記六の2の第三次勧告がいう時期に情報提供することが適当であると考えるが、政府の見解を明らかにされたい。
令和二年六月五日
内閣総理大臣 安倍 晋三
参議院議長 山東 昭子 殿
参議院議員吉川沙織君提出地方公共団体に対する計画等の策定の義務付けに関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
参議院議員吉川沙織君提出地方公共団体に対する計画等の策定の義務付けに関する質問に対する答弁書
一について
お尋ねの「計画等の策定を義務付ける規定」、「計画等の策定を「できる」とする規定」及び「計画等の策定を努力義務とする規定」の件数等については把握していないが、今後、その件数等の把握について検討してまいりたい。
二について
地方公共団体に対する計画等の策定の義務付け等については、例えば、令和二年五月十九日に開催された国と地方の協議の場において、地方六団体から、「地方団体に対して新たな計画の策定・・・等を・・・実質的に全国一律に義務付けている例が見られる」との認識が示されていることは承知しているが、お尋ねの「実態」については網羅的には把握していない。
三について
「地方分権改革推進計画」(平成二十一年十二月十五日閣議決定)において、御指摘の「義務付け・枠付けに関する原則」は明記していないが、「地域主権推進大綱」(平成二十四年十一月三十日閣議決定)において、地方分権改革推進委員会第三次勧告(平成二十一年十月七日)の趣旨を踏まえて、義務付け・枠付け(法令による地方公共団体に対する事務の処理又はその方法の義務付けをいう。以下同じ。)の見直しについて明記している。
四の1について
御指摘の「政府部内の手続」については、「地域主権推進大綱」等に基づき、各府省の大臣官房等総合調整機能を有する部局において審査を行うなどの対応をしているところである。
四の2について
御指摘の「閣法の法令協議」において、内閣府及び総務省は、御指摘の「確認」、「判断」等を行いながら、義務付け・枠付けが必要最小限となるように意見を述べるなどしているところである。
今後とも、地方分権改革推進委員会の累次の勧告等を踏まえ、適切に対応してまいりたい。
四の3について
内閣提出法律案は、御指摘のように「「義務付け・枠付けに係る国の立法に関する原則」及び「義務付け・枠付けの存置を許容する場合等のメルクマール」に抵触するものは国会に提出されない」というものではない。
五について
お尋ねは、議員立法に関する事項であり、政府としてお答えすることは差し控えたい。
六の1について
御指摘の「前記一の(2)及び(3)」には様々な内容のものが含まれると考えられ、お尋ねについて一概にお答えすることは困難であるが、地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百六十三条の三第五項に規定する「地方公共団体に対し新たに事務又は負担を義務付けると認められる施策」には、施策を行うかどうかは地方公共団体の裁量によるが、当該施策を行う場合に事務又は負担の義務付けがあるものも含まれるものと解しているところである。
六の2の前段及び3について
御指摘の「法律の条文上は地方公共団体に事務又は負担を義務付ける規定とはなっていなくても、実態としては義務付けと変わらない場合」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、御指摘の「情報提供の時期」については、地方自治法第二百六十三条の三第五項に規定する「地方公共団体に対し新たに事務又は負担を義務付けると認められる施策の立案をしようとする場合」には、同項の規定に基づき、各大臣において適切に判断しているものと認識している。
六の2の後段について
各大臣による御指摘の「情報提供」の状況については、内閣府又は総務省が「常時把握する仕組み」とはなっていないが、地方自治法第二百六十三条の三第五項に規定する「適切な措置」が講じられるよう、総務省において、各府省に対し、「地方自治法第二百六十三条の三第五項の連合組織に対する情報提供制度の適切な運用について」(平成二十年十月三十一日付け総行行第百四十八号総務省自治行政局長通知)を発出するなどの対応をしているところである。
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