在留支援のための やさしい日本語ガイドライン (案)
法務省ホームページより
目次
第1章 はじめに
外国人住民の増加と多様化
第2章 在留支援のためのやさしい日本語 ガイドライン
(1)本ガイドラインの目的
(2)在留支援のためのやさしい日本語 作り方のポイント
➤ ステップ➊ 日本人にわかりやすい文章
・情報を整理する
・文をわかりやすくする
・外来語に気を付ける
➤ ステップ❷ 外国人にもわかりやすい文章
・文をわかりやすくする
・言葉に気を付ける
・表記に気を付ける
➤ ステップ➌ わかりやすさの確認
第3章 書き換えツールの活用
やんしす
やさにちチェッカー
リーディング チュウ太
第4章 「やさしい日本語」の変換例
「やさしい日本語」の変換例
「やさしい日本語」の変換例 問題演習
第1章 はじめに
日本に住む外国人は、この30年で3倍に増え、国籍も多様化しています。外国人への情報発信の手段として「やさしい日本語」を広く活用することが期待されています。
外国人住民の増加と多様化
✽ 日本に住む外国人は、ほぼ毎年増えている日本に住む外国人の数は,ほぼ毎年増えていて,2019年末には約293万人(※1)で過去最多になり、30年で約3倍に増えています(法務省調べ)。
外国人が日本で安全に安心して生活するためには,法律などのルール,在留や社会保険などの手続,災害・避難情報をはじめとする国や地方公共団体からのお知らせなどを正しく理解することが必要です。 日本政府は,外国人のための情報提供について,「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策」 (※2)の中で,全ての省庁で「外国語で提供する行政情報・生活情報の更なる内容の充実と,多言語化による情報提供・発信を進める」こととしています。
一方,日本に住む外国人の国籍の多様化が進んでいます。日本に住む外国人の国籍をみると,1988年には全体の7割強が韓国・朝鮮でしたが,2019年には中国,韓国,ベトナム,フィリピン,ブラジルの5か国を合わせて7割強になっています。また,上位10か国の公用語だけで9言語に上ります。
順 国籍・地域 公用語 人数 構成比 累計
1 中国 中国語 786,241 27.7%(0.6%) 27.7%(0.6%)
2 韓国・朝鮮 韓国・朝鮮語 480,518 16.9%(0.3%) 44.7%(1.0%)
3 ベトナム ベトナム語 371,755 13.1%(0.2%) 57.9%(1.3%)
4 フィリピン フィリピン語・英語 277,409 9.8%(0.2%) 67.7%(1.5%)
5 ブラジル ポルトガル語 206,886 7.3%(0.1%) 75.3%(1.6%)
6 ネパール ネパール語 92,804 3.2%(0.07%) 78.3%(1.7%)
7 台湾 中国語 61,960 2.1%(0.05%) 80.5%(1.8%)
8 インドネシア インドネシア語 61,051 2.1%(0.05%) 82.6%(1.8%)
9 アメリカ合衆国 英語 58,484 2.0%(0.05%) 84.7%(1.9%)
10 タイ タイ語 53,713 1.9%(0.04%) 86.6%(1.9%)
11 ペルー スペイン語 48,517 1.7%(0.04%) 88.3%(1.9%)
12 インド ヒンディー語・英語 37,933 1.3%(0.03%) 89.6%(2.0%)
13 ミャンマー ミャンマー語 28,860 1.0%(0.02%) 90.6%(2.0%)
14 スリランカ シンハラ語・タミル語 26,229 0.9%(0.02%) 91.6%(2.0%)
15 イギリス 英語 17,734 0.6%(0.01%) 92.2%(2.0%)
16 パキスタン ウルドゥー語・英語 16,968 0.6%(0.01%) 92.8%(2.0%)
17 バングラデシュ ベンガル語 16,030 0.5%(0.01%) 93.4%(2.0%)
18 フランス フランス語 13,950 0.4%(0.01%) 93.9%(2.1%)
19 カンボジア クメール語 13,191 0.4%(0.01%) 94.3%(2.1%)
20 モンゴル モンゴル語 12,012 0.4%(0.01%) 94.8%(2.1%)
その他 ーー 147,171 5.2%(0.1%) 100%(2.2%)
✽ 注目される「やさしい日本語」
このような社会の変化を受けて,日本に住む外国人に情報を伝えたいときに,多言語で翻訳・通訳するほかに,「やさしい日本語」を広く活用することが期待されています。「やさしい日本語」は,難しい言葉を言い換えるなど,相手に配慮した分かりやすい日本語のことです。外国人だけでなく,高齢者や障がいのある人などにも使われます。
✽ 受け手の外国人からも高いニーズ
受け手の外国人の言葉のニーズはどうでしょうか。国立国語研究所の調査によると,「日常生活に困らない言語」を日本語とした外国人は62%に上り,英語と答えた外国人の36%を大きく上回っています。また,法務省による調査でも,日本語で会話ができると答えた外国人は8割を超えています。さらに,東京都国際交流委員会の調査では,「希望する情報発信言語」として「やさしい日本語」を選んだ人が最も多く76%,「英語」が68%,「普通の日本語」が22%,「機械翻訳された母国語」が12%,「非ネイティブが訳した母国語」が12%と,「やさしい日本語」に対するニーズが高いことが分かります。
✽ 共生社会実現に向けた「やさしい日本語」ガイドライン
こうした背景を踏まえ,共生社会実現に向けたやさしい日本語の活用を促進するため,多文化共生や日本語教育の有識者,外国人を支援する団体の関係者などを集めて,在留支援のためのやさしい日本語ガイドラインに関する有識者会議(座長:山脇啓造明治大学教授 構成員:次ページ)を開催し,やさしい日本語の活用に関するガイドラインを作成しました。このガイドラインは,やさしい日本語を活用している地方公共団体や,外国人の意見を聞きながら作成したものです。
コラム
「やさしい日本語」の歴史
やさしい日本語の歴史は,1995年の阪神・淡路大震災に遡ります。この震災の時,日本人の死傷者は約1%でしたが,外国人の死傷者は2%以上でした。これ以降,外国人に対しても迅速に災害等の情報伝達を行う手段として取組が始まり,その後,新潟県中越地震や東日本大震災を経て,災害時のやさしい日本語での発信の取組が全国に広がりました。一方,平時のやさしい日本語での情報発信も,2000年代に入ってから,地方公共団体や国際交流協会で始まっています。近年では,外国人観光客とのコミュニケーションや,外国人住民と日本人住民の交流を促進する手段としてやさしい日本語を活用した取組も進んでいます。
このように「やさしい日本語」は多方面で期待されていますが,やさしい日本語の有用性はまだ多くの人に知られていません。熊本地震の時には,避難所でベトナム人と日本人がコミュニケーションをとることができず,お互いに距離を置いていたという事例がありました。この原因の一つとして,ベトナム人がやさしい日本語であればコミュニケーションが取れることを日本人が認識していなかったことが指摘されています。
日本人にとってのわかりやすい日本語
国や地方公共団体が出す文書は,日本人(この章では,日本語ネイティブ(日本語母語話者)を表します。)にとってもわかりにくいことがあります。これは日本だけの問題ではありません。例えばアメリカでは2010年に国の役所が出す文書を分かりやすく書くことが法律(Plain Writing Act of 2010)で義務付けられました。
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