種苗法の改正に関する質問主意書

衆議院ホームページ 質問主意書より


提出者  丸山穂高

種苗法の改正に関する質問主意書

 第二百一回国会において「種苗法の一部を改正する法律案」(以下、「本改正案」という)が内閣から提出された。本改正案の提案理由は、登録品種の育成者権の適切な保護及び活用を図るものであるとされるが、一方では、根拠の不確かな情報に基づいた反対意見や懸念も数多く見られることから、国民への説明を丁寧に行い、こうした疑念を払拭する必要がある。

 本改正案の前提となる現状等について以下、質問する。

一 登録品種について、平成十年度、平成十五年度、平成二十年度、平成二十五年度、平成三十年度における累計の登録品種数、育成者権が現存する品種数及び育成者権の存続期間が経過したことで一般品種化した品種数を示されたい。また一方で、本改正案による種苗法改正を前提に、昨今の登録品種数が急速に増えているという意見があるが、これは事実か。育成者権の存続期間が経過したことで一般品種化した品種を含めたこれまでに登録されたことがある全品種における現在の登録品種の構成比を示した上で、詳細を伺いたい。

二 本改正案は、現行の種苗法第二十一条第二項に規定する、農業者による登録品種の種苗の利用行為(いわゆる自家増殖)を一律に禁止するものなのか、政府の見解を問う。

三 種苗法の要件に照らし、長年地域の農業者により受け継がれ利用されている品種等の在来種が品種登録されることはあるのか。また、品種登録の要件を満たさずに登録されたことや、在来種を新品種と偽るなど虚偽により登録を受けたことが事後的に発覚した場合には、どのような措置がとられるのか、政府の見解を問う。

四 登録品種の海外流出の防止は現在の種苗法第二十一条第四項で対応できるので、本改正案自体が不要という意見がある。種苗法第二十一条第四項では対応が困難である理由について、詳細を伺いたい。


答弁書

一について

 平成十年度、平成十五年度、平成二十年度、平成二十五年度及び平成三十年度の各年度において、①登録品種数、②過去に品種登録を受け、その後登録品種でなくなった品種数(以下「一般品種化品種数」という。)並びに③①及び②の合計をお示しすると、それぞれ次のとおりである。

 平成十年度 ①四千十八 ②三千百四十九 ③七千百六十七

 平成十五年度 ①五千三百八十二 ②六千六百七十一 ③一万二千五十三

 平成二十年度 ①七千三百三十八 ②一万八百十六 ③一万八千百五十四

 平成二十五年度 ①八千百三十四 ②一万五千二百五十一 ③二万三千三百八十五

 平成三十年度 ①八千百三十五 ②一万九千二百六十一 ③二万七千三百九十六

 また、直近五年間の各年度において、①登録品種数、②登録品種数及び一般品種化品種数の合計並びに③②に占める①の割合をお示しすると、それぞれ次のとおりである。

 平成二十六年度 ①八千二百四 ②二万四千二百七十五 ③約三十四パーセント

 平成二十七年度 ①八千二百六十九 ②二万五千百六十六 ③約三十三パーセント

 平成二十八年度 ①八千二百九十一 ②二万五千九百四十九 ③約三十二パーセント

 平成二十九年度 ①八千三百十一 ②二万六千七百四十四 ③約三十一パーセント

 平成三十年度 ①八千百三十五 ②二万七千三百九十六 ③約三十パーセント

 これらの実績をみると、近年、登録品種数は横ばいであるため、登録品種数が急速に増加しているという事実は認められない。

二について

 今国会に提出している種苗法の一部を改正する法律案においては、種苗法(平成十年法律第八十三号)第二十一条第二項及び第三項の規定を削除することとしており、この改正により、同条第二項に規定するいわゆる自家増殖には、同法第二条第五項第一号に規定する種苗を生産する行為として、同項に規定する他の利用と同様に育成者権の効力が及ぶこととなるが、農業者は、同法第二十六条第一項の規定により、育成者権者から通常利用権の許諾を受けることにより、いわゆる自家増殖を行うことができるため、これが一律に禁止されるものではない。

三について

 前段のお尋ねについては、品種登録を受けるためには、種苗法第三条第一項の規定により、出願者は同項に規定する育成者であること、同項第一号の規定により、公然知られた他の品種と特性の全部又は一部により明確に区別されること、同法第四条第二項の規定により、出願品種の種苗又は収穫物が日本国内において品種登録出願の日から一年さかのぼった日前に業として譲渡されていないこと等の要件を満たすことが必要であるため、お尋ねのような品種が品種登録されることはない。

 後段のお尋ねについては、その品種登録が品種登録の要件を満たさずにされたことが判明した場合には、同法第四十九条第一項第一号の規定により、当該品種登録は取り消されることとなる。また、詐欺の行為により品種登録を受けたことが判明した場合には、同号の規定により当該品種登録が取り消されることに加え、同法第六十八条の規定により当該品種登録を受けた者は三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金(法人に対しては、同法第七十三条第一項第二号の規定により、一億円以下の罰金)が科されることとなる。

四について

 種苗法第二十一条第四項においては、育成者権者、専用利用権者又は通常利用権者の行為により登録品種の種苗又は収穫物が譲渡されたときは、当該登録品種につき品種の育成に関する保護を認めていない国以外の国に対し、種苗を輸出する行為及び最終消費以外の目的をもって収穫物を輸出する行為には、当該登録品種の育成者権の効力は及ばない旨が規定されている。ここでいう「当該登録品種につき品種の育成に関する保護を認めていない国以外の国」とは、千九百七十二年十一月十日及び千九百七十八年十月二十三日にジュネーヴで改正された千九百六十一年十二月二日の植物の新品種の保護に関する国際条約(昭和五十七年条約第十一号)に加盟しており、かつ、当該登録品種につき品種の育成に関する保護を認めている国や、千九百七十二年十一月十日、千九百七十八年十月二十三日及び千九百九十一年三月十九日にジュネーヴで改正された千九百六十一年十二月二日の植物の新品種の保護に関する国際条約(平成十年条約第十六号)に加盟している国を意味しており、現行法上、育成者権者は、登録品種の種苗又は収穫物を譲渡したときは、これらの国に対し当該登録品種の種苗を輸出する行為及び最終消費以外の目的をもって収穫物を輸出する行為には育成者権の効力が及ばないため、それらの行為を制限できず、登録品種の種苗の流出を防止することは困難となっている。

à suivre

今を考えるため情報源を文字として残したい。 そしてまた後日、それを読み返してみたい。 自分自身で考えることをやめないように。