イージス・アショア配備候補地の絞り込みに関する質問主意書
衆議院ホームページ 質問主意書より
提出者 亀井亜紀子
イージス・アショア配備候補地の絞り込みに関する質問主意書
イージス・アショア配備計画をめぐり、「むつみ演習場と新屋演習場にイージス・アショアを配備した場合、二基で最もバランス良く我が国全域を防護できる」に係る根拠について、政府の説明は不十分である。
「なぜ、むつみ演習場と新屋演習場が候補地なのか」という住民と自治体の疑問にも、未だ政府から明確な根拠が示されず、候補地周辺地域では種々の混乱が続いている。
よって、以下のとおり質問する。
一 防衛省の「第二回説明会資料(平成三十年防衛省)」(二十四頁)において、「配備候補地の検討過程」として、「配備候補地の分析」と「配備候補地の絞り込み」に、「米国ミサイル防衛庁の協力を得て検討」と記載されているが、
1 いかなる経緯で米国ミサイル防衛庁の「協力」を得ることになったのか。
2 検討の時期はいつからか。
二 米国ミサイル防衛庁の「協力」について、
1 日米で、陸上自衛隊新屋演習場や、むつみ演習場の現地視察・調査等を実施したのか。
2 「数理的な分析」だけで、むつみ演習場と新屋演習場を「選定」したのか。
3 地元住民の住宅・生活地との距離は実地に踏査したのか。
4 むつみ演習場は古来より活火山の溶岩台地であり、この台地を大濾過槽にして湧き出る地下水を農業用水、飲料として、代々住民は生活を営んできたが、「候補地の絞り込み」にあたって地域の自然や史実は勘案したのか。
三 防衛省の再説明資料「(別冊)イージス・アショアの配備について(令和元年十二月)」(十一頁)においては、「これまでに実施したシミュレーション分析の結果」、むつみ演習場と新屋演習場が最も適切な組み合わせだと説明している。
1 「シミュレーション分析」とは何か、具体的に説明されたい。
2 秋田県知事及び秋田市長による「イージス・アショアの配備候補地に係る検討等について(申入れ)(令和二年一月三十一日)」にもある「秋田県付近及び山口県付近に配備することにより、国土全域をバランス良く防護できるとした数理的な分析結果」(一頁)について、改めて具体的に説明されたい。
3 「防護範囲のイメージ」の楕円形は誤解を招いているので、円形にすべきではないか。
四 防衛省は、「平成三十年(二〇一八年)五月二十八日に、(防衛)省内の委員会で陸自むつみ演習場と陸自新屋演習場を配備候補地として選定し、更なる調査を進めていくことを確認した上で、六月一日に対外公表を実施」(第二回説明会資料二十四頁)したとしている。
1 「省内の委員会」について具体的に説明されたい。
2 この「選定」における米国ミサイル防衛庁の関与・「協力」について、具体的に説明されたい。
3 閣議決定から半年も経たない時期に配備候補地を選定・絞り込みを行ったことは、拙速ではないか。
五 むつみ演習場から二十㎞圏内に、萩市街と島根県津和野町、島根県益田市があり、特に萩・津和野においては観光業が重要な産業である。山口県萩市・阿武町だけでなく、島根県に対する説明も必要と考えるが、如何か。
令和二年四月二十四日
内閣総理大臣 安倍晋三
衆議院議長 大島理森 殿
衆議院議員亀井亜紀子君提出イージス・アショア配備候補地の絞り込みに関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員亀井亜紀子君提出イージス・アショア配備候補地の絞り込みに関する質問に対する答弁書
一の1、二の1及び四の2について
御指摘の「配備候補地の絞り込み」においては、陸上配備型イージス・システムを配備し、及び運用している米国から、その性能及び運用に係る情報の提供を受けるため、同国国防省ミサイル防衛庁から必要な協力を得ていたところであるが、これ以上の詳細について明らかにすることは、同国との関係もあり、差し控えたい。
一の2について
政府としては、「平成二十六年度以降に係る防衛計画の大綱について」(平成二十五年十二月十七日閣議決定)において「弾道ミサイル防衛システムについては、我が国全域を防護し得る能力を強化するため、即応態勢、同時対処能力及び継続的に対処できる能力を強化する」などとし、平成二十六年度以降、新たな弾道ミサイル防衛システムの整備を含め、当該能力の強化の在り方について検討を進めた結果、「弾道ミサイル防衛能力の抜本的向上について」(平成二十九年十二月十九日閣議決定)により、陸上配備型イージス・システムを二基導入することとしたところ、こうした検討の一環として、防衛省においては、我が国に陸上配備型イージス・システムを導入することとした場合の配備候補地についても検討を進めていたものである。
二の2について
御指摘の「数理的な分析」については、我が国全域を常時・持続的に防護する観点から、陸上配備型イージス・システム二基を日本海側の北と西にバランス良く配置するためには、それぞれをどの地域に配置するのが適当かという点について実施したものであり、その結果として、秋田県付近及び山口県付近に配置した場合、二基でバランス良く我が国全域を常時・持続的に防護することが可能であると見込まれたものである。
その上で、弾道ミサイルの探知に支障が出ないようなるべく遮蔽となるものがない場所に配置する必要があること、レーダー及び発射台を適切に配置できるよう広くてなるべく平たんな敷地を確保できる場所に配置する必要があること、電力、水道等の安定的な供給の確保が見込まれる場所に配置する必要があること、周辺の住民及び環境に対する影響が生じないように配置する必要があること、陸上配備型イージス・システムを可及的速やかに配備する必要があること等を踏まえつつ、秋田県付近及び山口県付近の日本海側に所在する自衛隊施設を中心に、配備候補地の詳細な検討を行った結果、当該配備候補地として、陸上自衛隊新屋演習場及び陸上自衛隊むつみ演習場を選定したものである。
二の3及び4について
防衛省においては、陸上自衛隊新屋演習場及び陸上自衛隊むつみ演習場を陸上配備型イージス・システムの配備候補地として選定した後、これらの演習場で陸上配備型イージス・システムについて安全に配備及び運用をすることができるか否かという観点から、水環境の調査も含めた各種調査を実施したところであり、その際、これらの演習場の周囲の状況についても、必要な情報収集を実施したものである。
三の1について
お尋ねの「シミュレーション分析」については、二の2についてで述べた「数理的な分析」を指すものである。
三の2について
お尋ねの「数理的な分析結果」の詳細については、我が国が導入する陸上配備型イージス・システムも含め、我が国の弾道ミサイル防衛システムの具体的な対処能力を明らかにするおそれがあることから、お答えを差し控えたい。
三の3について
お尋ねの意味するところが必ずしも明らかではないが、御指摘の「防護範囲のイメージ」については、我が国に飛来する可能性のある弾道ミサイルの性能、発射地点等に加えて、我が国が導入する陸上配備型イージス・システムやこれに搭載する予定の弾道ミサイル防衛用能力向上型迎撃ミサイル(SM―三ブロックⅡA)の性能、射程等を勘案した上で、あくまでもイメージとして作成したものである。
四の1について
お尋ねの「省内の委員会」とは、防衛副大臣を委員長とする統合機動防衛力構築委員会を指すものである。
四の3について
陸上配備型イージス・システムの配備候補地の選定については、二の2についてで述べたとおりの検討を経て行ったものであり、「拙速」との御指摘は当たらないと考えている。
五について
陸上自衛隊むつみ演習場における陸上配備型イージス・システムの配備については、同演習場が所在する山口県及び同県内の関係自治体に対して、しっかりと説明していく必要があると考えているところである。
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