第二次世界大戦後の連合国軍事裁判におけるBC級戦犯に関する質問主意書

参議院ホームページ 質問主意書より


有田 芳生

   第二次世界大戦後の連合国軍事裁判におけるBC級戦犯に関する質問主意書

 日本は戦後七十五年を迎えますが、第二次世界大戦後に連合国による軍事裁判によって裁かれたBC級戦犯者のことはあまり国民に知られていません。

 当事者らの手記や研究者による書籍や論文が公にされてきましたが、日本政府としての包括的な調査と報告が欠落していると思われます。

 日本が引き起こした戦争犯罪について、政府と国民が正確に認識し、歴史として正しく伝え、内外に発信していくことは、国際的な責務です。

 以下、BC級戦犯者の問題について質問します。

一 連合国による軍事裁判は何か所で行われ、全部で何件あり、被告は何人で、そのうち有罪とされたのは何人ですか。

二 連合国による軍事裁判の被告、有罪者の中には、植民地だった朝鮮・台湾あるいは他の国籍の方もいました。被告、有罪者となった人は、日本人もふくめてそれぞれ何人ですか。民族・国籍別の数字をお示しください。

三 連合国による軍事裁判で有罪とされた方々はどのような容疑によって訴追され、その罪を認定されたのか、犯罪の類型別件数や傾向についてお示しください。

四 連合国による軍事裁判の記録のすべてを日本政府は保管していますか。記録は日本政府のどの部局が収集し、現在保管しているのかをお示しください。

五 日本政府が入手した連合国による軍事裁判の記録の控えは、被告本人や遺族に直接提供されていますか。あるいは求められれば提供しますか。日本政府の方針をお示しください。

六 日本政府は連合国による軍事裁判の外国籍受刑者・遺族に、裁判の結果やその内容について告知しましたか。

七 連合国による戦犯裁判は勝者による不当な裁きであったと批判する主張が根強くあります。日本政府はこうした主張についてどう認識していますか。

八 BC級戦犯者の問題はすでに歴史の一部となりつつあります。しかし外国籍(韓国・朝鮮・台湾)の元BC級戦犯者・遺族は現在も日本国による措置を求めて訴えを続けています。

 この問題に関する訴えを受理した東京地裁・東京高裁・最高裁はいずれも韓国人元BC級戦犯者の境遇に深く同情し、日本人元戦犯との差別是正のための立法を促しています。一九九八年七月十三日に東京高裁は、判決文で以下のように述べています。

 「・・・国際的、政治的その他の諸事情によるやむを得ない面があったとはいえ、戦犯者控訴人らについてみれば、ほぼ同様にあった日本人、更には台湾住民と比較しても、著しい不利益を受けていることは否定できない。

 このような状況の下で、戦犯者控訴人らが不平等な取り扱いを受けていると感じることは、理由のないことではないし、その心情も理解し得ないものではない。

 この問題について何らの立法措置が講じられていないことが立法府の裁量の範囲を逸脱しているとまではいえないとしても、適切な立法措置がとられるのが望ましいことは、明らかである。第二次大戦が終わり、戦犯控訴人らが戦犯者とされ、戦争裁判を受けてから既に五十年余の歳月が経過し、戦犯者控訴人らはいずれも高齢となり、当審係属中にも、そのうちの二人が死亡している。国政関与者において、この問題の早期解決を図るため適切な立法措置を講じることが期待される。」

 この指摘からすでに二十年以上が経ちます。台湾の元軍人・軍属や在日の韓国籍の戦傷病者らが日本政府に補償を求めた裁判でも、判決の中で同様に立法解決を促す勧告が行われ、後にそれぞれ立法措置が取られています。

 現在、外国籍BC級戦犯者の訴えに対して日本政府はどのように向き合おうとしているのでしょうか。その認識と方針をお示しください。


答弁書

一について

 お尋ねの「連合国による軍事裁判」の具体的な範囲が明らかではなく、お答えすることは困難である。

 なお、その上で申し上げれば、第二次世界大戦における日本国民の戦争犯罪に関して行われた裁判としては、①東京において行われた極東国際軍事裁判所の裁判、②東京において行われたいわゆるGHQ裁判及び③連合国各国が開いた法廷において行われた裁判があったと承知している。③については、米国はマニラ、横浜、上海、グアム等において、英国はシンガポール、クアラルンプール、タイピン、ラングーン、香港、ペナン、ジェッセルトン、メイミヨウ等において、オーストラリアはラバウル、ウエワク、モロタイ、ダーウイン、シンガポール、香港、マヌス等において、オランダはバタヴィア、バリクパパン、マカツサル、モロタイ、ポンチャナック、メナド、アンボン、メダン、クーパン、バンジェルマシン、ホーランデイア等において、中国は上海、南京、広州、北京、徐州、漢口、瀋陽、済南、台北、太原等において、フランスはサイゴンにおいて、フィリピンはマニラにおいて裁判を行ったと承知している。これらの裁判において起訴された者は五千七百三十人であり、うち、死刑、無期刑又は有期刑に処せられた者は四千四百二十九人であると承知している。

二について

 お尋ねの「連合国による軍事裁判」の具体的な範囲が明らかではなく、お答えすることは困難である。

 なお、その上で申し上げれば、朝鮮半島出身者及び台湾出身者で戦争犯罪裁判において起訴された者の数、その裁判結果等については、いずれもその実態を正確に把握できないが、資料から推定できる受刑者総数は、朝鮮半島出身者について百五十人程度、台湾出身者について百七十人程度と承知している。

三から六までについて

 お尋ねの「連合国による軍事裁判」の具体的な範囲が明らかではなく、お答えすることは困難である。

七について

 お尋ねの「勝者による不当な裁き」の意味するところが明らかではなく、お答えすることは困難である。なお、その上で申し上げれば、極東国際軍事裁判所等の裁判については、法的な諸問題に関して種々の議論があることは承知しているが、我が国は、日本国との平和条約(昭和二十七年条約第五号)第十一条により、当該裁判を受諾しており、国と国との関係において、当該裁判について異議を述べる立場にはない。

八について

 お尋ねの「外国籍BC級戦犯者の訴え」の意味するところが明らかではなく、お答えすることは困難である。


à suivre

今を考えるため情報源を文字として残したい。 そしてまた後日、それを読み返してみたい。 自分自身で考えることをやめないように。